ナノスペースカーボンの科学と工学、極限環境の電気化学

名古屋工業大学 川崎・石井研究室

「最近の研究から」Vol. 58

【実験動画第2弾】高圧実験入門~タマゴを加圧してみよう~

 研究室Webの見出しに書いているように、我々の研究室では、ナノカーボンだけでなく「極限環境の電気化学」というテーマの研究も行っています。 どういうことかというと、高温・低温・高圧などの特殊環境下の電気化学反応について学術的に調べ、その知見を応用して特殊環境でも動作する電気化学デバイス(蓄電池など)を開発するというテーマです。この研究を進めることで、将来的に宇宙探査機や深海探査艇を高性能化に貢献できると考えています。

 いろいろな検討を行っていますが、現在、我々の研究室で特に力をいれて進めているのが「超高圧力下」で動作する蓄電池の開発です。Vol. 56で紹介したように、今年の春にはこの研究に対して電気化学会東海支部の奨励賞をいただきました。この研究のための実験装置の開発は、高圧機器メーカーの(シン・コーポレーション)様と共同で進め、現在、400 MPa(約4000気圧)までの静水圧下で、電気化学測定が行えるようになっています。

 400 MPaというのはマリアナ海溝・チャレンジャー海淵(地球の海で最も深い場所)の約4倍の圧力です。テレビの科学番組では高圧力(水圧)のすごさを紹介するための実験として「カップラーメンの容器の高圧処理」の様子が紹介されることがあります。とはいっても、カップラーメンの容器(発砲スチロール)の内部はほとんど空気なので、割りと低い圧力でも相当につぶれてしまいます。このような実験で100 MPaと400 MPaを比較しても、体積の変化が少なく、この装置のすごさがなかなか伝わりません。

 高校生や学部の1・2年生などを対象に、高圧力のすごさを伝えられる何か良い方法がないだろうか?と探していたら、「食品と高圧科学」という記事を見つけました。簡単にできる面白そうなの実験なので、実際に試して動画にしてみました。

 動画で示したように、タマゴを400 MPaで加圧すると、常温でもタンパク質が凝固します。おもしろいことに、黄身だけが固まったおもしろい触感のものが得られます。(加熱処理では白身が優先して固まるので、黄身だけ固まったものは得られない。)

 高圧力の世界は不思議がいっぱいです。

(Nov. 2020, YI)