ナノスペースカーボンの科学と工学、極限環境の電気化学

名古屋工業大学 川崎・石井研究室

「最近の研究から」Vol. 61

Ayarさん、3年半ありがとうございました。

 Ayar Al-zubaidiさんは2010年にイラクからの国費留学生として渡日し、2014年3月に私の研究室で学位を取得しました。彼女との最初の論文は直径分布の狭い単層カーボンナノチューブのサイクリックボルタモグラム(CV)が“ダンベル型”となることを報告したものです(JPC C, 2012)。2012年というとナノチューブ発見(1991)から20年以上、単層カーボンナノチューブの最初の報告(1993)から数えても20年近く経っています。当然数多くの電気化学実験がナノチューブに対して行われていたので今さらCV図を議論することに少しためらいがあったことを記憶しています(“ダンベル型”と命名する勇気が必要でした)。しかし、幸いにも“ダンベル型”は次第に認知されて、彼女の論文も多数引用してもらっています。

 Ayarさんは学位取得後に中国でポスドクをしばらく経験したあとに再び2019年に私の研究室に戻ってきました。再来日後はいくつかのプロジェクト研究で多くの成果を挙げてくれただけでなく、研究室学生の指導や学会・論文発表の手直しなど研究室に多大な貢献をしてくれました。後半においては光触媒による環境ホルモンの除去に熱心に取り組んでくださり研究室の大きな財産となりそうです。しばらく私たちのもとを離れますが、いつかまた一緒にと皆思っています。

(2022. Aug. /SK)