ナノスペースカーボンの科学と工学、極限環境の電気化学

名古屋工業大学 川崎・石井研究室

研究室ガイド(2023年度版)

はじめに

このページは来年度(2024年4月~)、当研究室への分属を考えている名工大生の参考のために書きました。

研究内容

当研究室ではフラーレン、カーボンナノチューブ、グラフェンに代表されるナノカーボンを機能化し、リチウムイオン二次電池負極、電気化学キャパシタ電極など、電気エネルギー貯蔵・変換デバイスへの応用を主に目指しています。「主に」と書いたのは、研究の幅が徐々に広がってきたためです。最近は、太陽光エネルギーや熱エネルギーを使った水素発生や二酸化炭素の再資源化のための触媒電極開発など、新たなテーマへの挑戦も始めています。(参考動画

また、我々の研究室が蓄積してきたナノカーボン電極の研究を応用し、電気化学のフロンティア領域を開拓も進めています。具体的には、深海や宇宙などの極限環境における電気化学反応の解明と、その応用を目指した研究を行っています。当研究室には4,000気圧(マリアナ海溝最深部の水圧の約4倍!)もの超高圧力を発生させられる実験装置が整備されています。(参考動画)これは世界に1台しかないオーダーメイドの装置です。(2023/12に改良版の2号機が納品される予定。)このような装置を駆使した実験で得られるデータは、深海・惑星探査機のための畜電池開発、資源調査等への応用に役立てられると考えています。このような基礎研究は、企業に就職してからではなかなかできない、大学だからこそ取り組めるテーマです。私たちの研究室で、新しいサイエンスの開拓を目指しませんか?

こうした研究は必ずしもすべて狙い通りというわけにはもちろんいかないのですが、少しずつですが目指している方向に研究が進展しつつあると感じています。いろいろなところからお声をかけていただき、さまざまな分野の先生方、企業と共同研究をさせていただいています。研究室の学生たちの弛まぬ努力のおかげで、最近ではアメリカ化学会(ACS)やイギリス化学会(RSC)などの有力な学術誌に掲載される論文も着実に増えてきています。

詳しい話は見学に来てくれた人にもれなくお聞かせします。皆さんの力で私たちの研究室の研究をぜひ加速させてください!

現在の卒論テーマ

  1. 目指せ研究テーマの脱炭素化!?窒化ホウ素(BN)ナノチューブを用いた太陽光CO2還元触媒の開発
  2. 熱エネルギーを電気エネルギーとして蓄える新奇蓄電池の開発
  3. 打倒ハーバーボッシュ法!ナノカーボンを用いたアンモニア合成光触媒の開発
  4. 光エネルギー貯蔵燃料電池のためのカーボンナノチューブ電極触媒の開発
  5. 貴金属フリー燃料電池空気触媒を実現するための単層カーボンナノチューブの精密分離と異種元素修飾

来年度の卒論テーマ

上記の研究内容と深く関係します。(詳細な内容は共同研究の状況や予算次第なので現時点では公開できませんが)カーボンナノチューブをはじめとした「ナノカーボン材料」を利用した次世代蓄電・発電デバイスの開発や、高圧電気化学に関するテーマを用意する予定です。企業ではなく大学の研究室ということで、数年後の実用化を目的とした小手先の改良ではなく、10年以上先を見据えた革新技術の開発を目指しています。(基礎研究や萌芽的な研究を重視

卒業研究は1年をかけて行われます。その間、実験結果について何度もグループ内で議論し方向性を皆さんとともに検討しますので、当初のテーマと大きく研究内容が変わってしまう場合もあります。研究内容で書いたように、新しいテーマの開拓も積極的に進めています。(これらのテーマを進めてくれる意欲的な学生を期待しています。)

今年は幸いにも色々なことに興味をもってくれる学生が多数いて、通常の化学実験だけでなく、機械工作(CADを使った装置設計)、電子工作(プリント基板の設計・工作)、プログラミングを駆使した装置開発(参考動画)なども行っています。

現在、当研究室がメインとしている学会は、炭素材料学会(冬開催)、電気化学会(年2回、春、秋開催)、フラーレン・ナノチューブ総合シンポジウム(年2回、春、秋開催)、中化連(秋開催)です。大学院生には、毎年1回程度どこかの学会で研究発表してもらうことにしています。今年度はM1の網野さんが炭素材料学会のポスター賞を受賞しました(最近の研究からVol. 64)。

数年前からドイツのエアランゲン大学(FAU)と、光触媒の共同研究を進めています。大学基金の援助を受けて、これまでに6名の大学院生が留学しました。(2017年度に2名、2018年度に3名、がそれぞれ3か月ずつ滞在。その後コロナの影響で滞っていましたが、2023年には交流が復活し、M1が1名が留学。)昨年からは、新たにマレーシアの大学と微生物燃料電池に関する共同研究も進めています。(来年度、M1の学生1名が留学予定。)やる気のある学生に対しては国際会議での発表や海外留学などについて可能な範囲でサポートをします。博士後期課程への進学も歓迎です。

研究室の仲間

2024年度の構成は、おそらく下記のようになります。
教員2名(川崎、石井)、D2 1名、D1 1名、M2 4名、M1 2名、卒研生(皆様)

求める人材

  1. 実験(合成・測定)が好きな人
  2. 新たな分野に挑戦する意欲のある人(新しい装置や測定技術開発に粘り強く積極的に取り組んでくれる人)

約束ごと(本当はたった一つ「他人に迷惑をかけない」)

よくある質問(Q&A)

Q)研究テーマはどのように決まるのですか?

4月に配属人数分のテーマリストを提示します。「誰がどのテーマを担当するか?」については、卒研生間の話し合いで決めてもらいます。年度初めに2週間~1か月程度、実験装置の使い方などの基礎技術を学ぶ研修期間(M1・M2主導)を設けますので、この期間に考えてください。

研究を進めているうちに予期せぬ発見があり、当初のテーマと大きく研究内容が変わってしまう事が多々あります。4月に与えるテーマは、研究をはじめるための取っ掛かりと考えてください。

Q)指導教員(川崎 or 石井)は、どうなりますか?

(研究テーマによって川崎/石井の重心が変化しますが)基本的には全員、川崎と石井の2名が共同して研究指導を行います。多くの場合、日常的な細々とした相談(実験方法やデータ解析の方法)は石井と、中・長期的な話し合いは石井・川崎の両名と、といった形になるかと思います。

Q)研究室セミナーのスケジュール・頻度は?

週に二度、セミナー(研究の進捗報告、論文紹介、タイトルサービス)があります。これに加え、卒研生は英語の教科書の輪読を週に1度行います(3カ月程度)。

また、不定期で勉強会を開催することがあります。2021年は、川崎と石井が講師となり、X線回折とプログラミング(Python)の勉強会を行いました。 2022年・2023年は分光実験に関する勉強会と、研究のためのパソコン教室(グラフ描画ソフト、結晶構造描画ソフトの使い方講座)を開催しました。 さらに今年は、有志で電極触媒に関する勉強会を行いました。

Q)学生の進路について教えてください?(大学院への進学は必須ですか?)

本音を言うと大学院への進学希望の方を希望していますが、進路(就職/名工大への進学/他大学への進学)について特に制限は設けていません。我々の研究室の場合、名工大の院に内部進学して、M2で就職という学生が多いです。博士後期課程への進学も歓迎です。やる気のある学生に対しては国際会議での発表や海外留学などについてできる限りサポートをします。

大学院入試を受験する人に対しては、例年3か月程度、個人の研究を中断して試験勉強に専念するための時間を用意しています。(研究室セミナーには参加してもらいます。)就職については、正直なところ我々にはコネは一切ありません。就職先の業界も様々です。(就職は本人の努力次第)

なお、我々の研究室では大学院の博士前期課程への内部進学について、「生命・応用化学系プログラム」以外に「カーボンニュートラルプログラム」を希望することができます。(どちらか好きな方を選択できます。生命・物質化学プログラムでカーボンニュートラルプログラムを選択できるのは、川崎・石井研と南雲研の2研究室のみ。)CO2削減やエネルギー・環境問題の解決に向けた最先端の技術開発についての講義を受講することができます。これらのテーマについて興味のある方は是非カーボンニュートラルプログラムへの進学もご検討ください。

Q)電気化学の講義を履修していませんでしたが、大丈夫ですか?

当研究室のテーマは、多くの場合、電気化学に関係するものとなります。未履修の方も歓迎ですが、授業で扱った基礎的な事項については、各自で勉強いただく必要があります。(選択科目を受講しなかったのは、必要な場合には独学する自信と覚悟があったから、と理解しています。)

未履修者が配属された場合は、3月に自習用教材として電気化学の授業動画(川崎先生の担当分)を公開しますので、視聴してください。また、必要に応じて関連した書籍を貸し出します。

Q)コアタイムってありますか?

率直に言うと、コアタイムは設けておりません。研究室の定例ゼミには必ず参加してもらう必要がありますが、個々の研究については自主性を重んじ、やるべきことを計画的に集中して行うことを奨励しています。 (研究室開設当初からずっと同じ。)ただし安全上の理由から、深夜や休日に「1人だけで実験」を行うことは禁止しています。

よく誤解する学生がいるのですが、「コアタイムが無い=研究を全くやらない日があっても良い」というわけではありません。(平日に終日休む場合には、教員宛てに事前のメール連絡が必要です。)

上記の「約束ごと」の一番上に書いた通り、我々の研究室では研究を「やらされる人」ではなく、研究を自ら「楽しめる人」を求めています。コアタイムの時間だけ教員の指示どおりに実験だけをこなす「作業員」は必要ありません。 自主性や積極性に乏しい方は、当研究室には向いていないかと思いますので、くれぐれもご注意ください。(学生・教員の双方にとって不幸な結果となります。)

Q)研究室の年間行事(交流を目的としたもの)は、どのようなものがありますか?

2023年度は、研究室の「公式行事」としては以下の2つを実施しました。

コロナ禍前、これまでは下記のようなイベントも実施していました。

上記イベントは柳生研と合同で開催してきました。これらについては、学生の皆さんから「ぜひやりたい」という要望があれば、復活させていきたいと思います。積極的にご提案ください。