ナノスペースカーボンの科学と工学、極限環境の電気化学

名古屋工業大学 川崎・石井研究室

研究室ガイド(2020年度版)

はじめに

このページは来年度(2021年4月~)、当研究室への分属を考えている名工大生の参考のために書きました。

研究内容

名工大生向けに、Moodleの「無機化学実験(20-1-7418)」の授業ページに研究紹介の動画をアップしてあります。ぜひご視聴ください。(Moodleの授業登録者は、このリンクからも視聴可)Moodleには登録制限を設けていないので、2部生も「コース選択」から授業科目名「無機化学実験」を検索して登録すれば視聴可能です。以下の文章は、この動画の要約です。

当研究室ではフラーレン、カーボンナノチューブ、グラフェンに代表されるナノカーボンを機能化し、リチウムイオン二次電池負極、電気化学キャパシタ電極などエネルギーデバイスへの応用を主に目指しています。

「主に」と書いたのは、研究の幅が徐々に広がってきたためです。最近は、ガスクロマトグラフやソーラーシミュレータ(太陽光を再現する高性能ライト)を導入し、光エネルギーを使った水素発生や二酸化炭素の再資源化のための触媒電極開発など、新たなテーマへの挑戦も始めています。

また、我々の研究室が蓄積してきたナノカーボン電極の研究を応用し、電気化学のフロンティア領域を開拓も進めています。具体的には、深海や宇宙などの極限環境における電気化学反応の解明と、その応用を目指した研究を行っています。皆さんが授業で習ったように、圧力と温度は熱力学の最重要パラメータです。しかし、電気化学分野では日常的な実用デバイスへの直接応用を目指した研究が先行しており、特殊な温度・圧力環境での反応・物性については、ほとんど調べられてきませんでした。このような未開領域を開拓することで、新たなる学問領域を創製ができるのでは?と密かに期待しております。
当研究室には4,000気圧(マリアナ海溝最深部の水圧の約4倍!)もの超高圧力を発生させられる実験装置が整備されています。世界に1台しかないオーダーメイドの装置です。このような装置を駆使した実験で得られるデータは、深海・惑星探査機のための畜電池開発、資源調査等への応用に役立てられると考えています。このような基礎研究は、企業に就職してからではなかなかできません。大学の研究室だからこそ取り組めるテーマだと考えています。

こうした研究は必ずしもすべて狙い通りというわけにはもちろんいかないのですが、少しずつですが目指している方向に研究が進展しつつあると感じています。いろいろなところからお声をかけていただき、さまざまな分野の先生方、企業と共同研究をさせていただいています。研究室の学生たちの弛まぬ努力のおかげで、最近ではアメリカ化学会(ACS)やイギリス化学会(RSC)などの有力な学術誌に掲載される論文も着実に増えてきています。

詳しい話は見学に来てくれた人にもれなくお聞かせします。皆さんの力で私たちの研究室の研究をぜひ加速させてください。

現在の卒論テーマ

  1. 光や熱エネルギーを貯蔵する新型蓄電デバイスの開発
  2. フッ素修飾フラーレンを用いた新規太陽電池の開発
  3. 超高出力レーザーを利用した新規ナノカーボン材料の合成
  4. カーボンナノチューブのチューブ内を利用した電気化学合成
  5. 単層カーボンの精密分離法の開発
  6. 単層カーボンナノチューブの電気化学的な安定性の解明
  7. 全固体リチウムイオン電池の超高圧力下での動作挙動の解明

来年度の卒論テーマ

上記の研究内容と深く関係します。(詳細な内容は予算や共同研究の状況次第なので現時点では公開できませんが)カーボンナノチューブをはじめとした「ナノカーボン材料」を利用した次世代蓄電・発電デバイスの研究開発に関するテーマを用意する予定です。

企業ではなく大学の研究室ということで、数年後の実用化を目的とした小手先の改良ではなく、10年以上先を見据えた革新技術の開発を目指しています。(基礎研究や萌芽的な研究を重視)

卒業研究は1年をかけて行われます。その間、実験結果について何度もグループ内で議論し方向性を皆さんとともに検討しますので、当初のテーマと大きく研究内容が変わってしまう場合もあります。研究内容で書いたように、新しいテーマの開拓も積極的に進めています。(これらのテーマを進めてくれる意欲的な学生を期待しています。)

今年は幸いにも色々なことに興味をもってくれる学生が多数いて、通常の化学実験だけでなく、機械工作(CADを使った装置設計)、電子工作(プリント基板の設計・工作)、プログラミングを駆使した装置開発なども行っています。

現在、当研究室がメインとしている学会は、炭素材料学会(冬開催)、電気化学会(年2回、春、秋開催)、フラーレン・ナノチューブ総合シンポジウム(年2回、春、秋開催)、中化連(秋開催)です。

大学院生には、毎年1回程度どこかの学会で研究発表してもらうことにしています。今年は、卒研生も1名、炭素材料学会という学会で発表(オンデマンドのビデオ発表+ZOOMでの質疑応答)しました。なお、この学会では、当研究室のM1の学生1名が学生優秀発表賞を受賞しました。

数年前からドイツのエアランゲン大学(FAU)と、光触媒の共同研究を進めています。大学基金の援助を受けて、これまでに5名の大学院生が留学しました。(2017年度に2名、2018年度に3名、がそれぞれ3か月ずつ滞在。)現在、コロナウィルスの問題があるので停滞していますが、やる気のある学生に対しては国際会議での発表や海外留学などについて可能な範囲でサポートをします。博士後期課程への進学も歓迎です。

研究室の仲間

2021年度の構成は、おそらく下記のようになります。
教授1名、助教1名、ポスドク1名、M2 6名、M1 7名(内部進学6名+他大学から受け入れ1名)、+卒研生(皆様)

よくある質問(Q&A)

Q)コアタイムってありますか?

最も多く寄せられる質問です。率直に言うと、コアタイムは設けておりません。研究室の定例ゼミには必ず参加してもらう必要がありますが、個々の研究については自主性を重んじ、やるべきことを計画的に集中して行うことを奨励しています。(研究室開設当初からずっと同じ。)

このため、きちんと自己管理できるのであれば、日中に就活をしたり、夕方早期に帰宅してアルバイトや趣味に時間を使っていただいても結構です。ただし安全上の理由から、深夜や休日に「1人だけで実験」を行うことは禁止しています。

「コアタイムが無い=研究を全くやらなくても良い」というわけではないので、くれぐれも誤解しないでください。
(平日に終日休む場合には、メール連絡が必要です。)

以下の「約束ごと」の一番上に書いた通り、我々は研究を「やらされる人」ではなく、研究を「やりたい人」や「楽しめる人」を求めています。自主性・積極性に乏しく、コアタイムの有無を気にするような方は、当研究室には向いていないかと思いますのでご注意ください。

Q)指導教員(川崎 or 石井)は、どうなりますか?

(研究テーマによって川崎/石井の重心が変化するかと思いますが)基本的には全員、川崎と石井の2名が共同して研究指導を行います。多くの場合、日常的な細々とした相談は石井と、中・長期的な話し合いは石井・川崎の両名と、といった形になるかと思います。

Q)研究テーマはどのように決まるのですか?

4月になったら、配属人数分のテーマリストを提示します。

「誰がどのテーマを担当するか?」については、卒研生間の話し合いで決めてもらいます。年度初めに2週間~1か月程度、実験装置の使い方を学ぶ研修期間(M1・M2主導)を設けますので、この期間に学生間で相談して決めてください。

研究を進めているうちに予期せぬ発見があり、当初のテーマと大きく研究内容が変わってしまう事が多々あります。4月に与えるテーマは、研究をはじめるための取っ掛かりと考えてください。

Q)研究の進め方は?

研究テーマが近い学生同士を集めて、研究室内に4つ程度のグループ(学年混合で5人程度)をつくります。実験装置の使い方等の日々の細々とした指導は、グループ内の先輩学生がおこなってくれるはずです。(学生の手に負えないときは、石井がサポート)

各自の研究の進捗状況や進め方について、このグループの学生間でディスカッションしてもらうことを習慣化してもらっています。相互に意見をだしあうことで、自分の研究だけでなく、他人の研究についても理解できる広い視野をもった人材に成長できるかと思います。

数週間に1度程度のペースで石井・川崎を交えた進捗報告会をグループごとにおこない、研究の進め方について討論します。

Q)研究室セミナーのスケジュール・頻度は?

週に二度、セミナー(研究の進捗報告、論文紹介、タイトルサービス)があります。これに加え、卒研生は英語の教科書の輪読を週に1度行います(3カ月程度)。

実施形態(オンライン/対面)については、コロナの状況を見ながら検討します。2020年は、オンライン(M.S. Teamsを使用)と対面(広めのゼミ室で開催)を50%-50%くらいの割合で行いました。

また、不定期で勉強会を開催することがあります。2020年は、川崎と石井が講師となり、X線回折、ラマン、窒素吸着、電気化学の勉強会を行いました。

Q)学生の進路について教えてください?(大学院への進学は必須ですか?)

本音を言うと大学院への進学希望の方(特に博士後期課程まで見据えたもの)を希望していますが、進路(就職/名工大への進学/他大学への進学)について特に制限は設けていません。

大学院入試のための試験対策が必要な人は、例年2~3か月程度、個人の研究を中断して勉強するための時間を用意しています。(研究室セミナーには参加してもらいます。)
上述のようにコアタイムを設けていないので、就職活動の時間も確保できるかと思います。

我々の研究室の場合、名工大の院に内部進学して、M2で就職という学生が多いです。
(今年は卒研生7名のうち、6名が進学、1名が就職。)

正直なところ、我々には就職先企業のコネ等は一切ありません。学生の就職先の業界も様々です。
(就職先は個々の学生の努力次第です。)

Q)研究室の年間行事(交流を目的としたもの)は、どのようなものがありますか?

2020年はコロナの影響で、研究室の「公式行事」としては全く開催できませんでしたが、これまでは下記のようなイベントを実施していました。

  1. 鶴舞公園でお花見
  2. 院試激励会
  3. ゼミ旅行
  4. DG杯(学科のソフトボール大会)
  5. 忘年会
  6. 歓送迎会

上記イベントは柳生研と合同で開催しています。来年度の実施の有無は、コロナの状況次第です。
(皆さんとともに、何か新しい交流方法を模索したいと考えています。)

約束ごと(本当はたった一つ「他人に迷惑をかけない」)