ナノスペースカーボンの科学と工学、極限環境の電気化学

名古屋工業大学 川崎・石井研究室

研究室ガイド(2019年度版)

はじめに

このページは来年度(2020年4月~)、当研究室への分属を考えている名工大生の参考のために書きました。

研究内容

当研究室ではフラーレン、カーボンナノチューブ、グラフェンに代表されるナノカーボンを機能化し、リチウムイオン二次電池負極、 電気化学キャパシタ電極などエネルギーデバイスへの応用を主に目指しています。

「主に」と書いたのは、研究の幅が徐々に広がってきたためです。 最近は、ガスクロマトグラフやソーラーシミュレータ(太陽光を再現する高性能ライト)を導入し、 光エネルギーを使った水素発生や二酸化炭素の再資源化のための触媒電極開発など、新たなテーマへの挑戦も始めています。

また、我々の研究室が蓄積してきたナノカーボン電極の研究を応用し、電気化学のフロンティア領域を開拓も進めています。 具体的には、深海や宇宙などの極限環境における電気化学反応の解明と、その応用を目指した研究を行っています。 皆さんが授業で習ったように、圧力と温度は熱力学の最重要パラメータです。しかし、電気化学分野では日常的な実用デバイスへの直接応用を 目指した研究が先行しており、特殊な温度・圧力環境での反応・物性については、ほとんど調べられてきませんでした。このような未開領域を開拓することで、 新たなる学問領域を創製ができるのでは?と密かに期待しております。 今年の春には4,000気圧(マリアナ海溝最深部の水圧の約4倍!)もの超高圧力を発生させられる実験装置を導入しました。世界に1台しかないオーダーメイドの装置です。 このような装置を駆使した実験で得られるデータは、深海・惑星探査機のための畜電池開発、資源調査等への応用に役立てられると考えています。 このような基礎研究は、企業に就職してからではなかなかできません。大学の研究室だからこそ取り組めるテーマだと考えています。

こうした研究は必ずしもすべて狙い通りというわけにはもちろんいかないのですが、少しずつですが目指している方向に研究が進展しつつあると感じています。 いろいろなところからお声をかけていただき、さまざまな分野の先生方、企業と共同研究をさせていただいています。 研究室の学生たちの弛まぬ努力のおかげで、最近ではアメリカ化学会(ACS)やイギリス化学会(RSC)などの有力な学術誌に掲載される論文も着実に増えてきています。

詳しい話は見学に来てくれた人にもれなくお聞かせします。皆さんの力で私たちの研究室の研究をぜひ加速させてください。

現在の卒論テーマ

  1. 安全で超高速動作可能な新規電池電極の開発
  2. 二酸化炭素を再資源化するための電極触媒の開発
  3. 高出力レーザーを用いたナノカーボンの新規合成法の開発
  4. フッ素修飾フラーレンを用いた新規太陽電池の開発
  5. カーボンナノチューブの内部を化学反応場として利用する
  6. 超高圧環境下での電気化学測定~生命の起源と限界の理解をめざして~

研究室の仲間

2020年度の構成は、おそらく下記のようになります。
教授1名、助教1名、M2 8名、M1 6名、+卒研生(皆様)

研究室での生活

川崎グループは大きくは応用無機化学分野に属します。学生居室は19-406と19-310の2部屋です。 最近は人数が増えてきて学生居室だけでは収まらなくなってきたので、一部の学生は石井の居室(19-402)で暮らしています。 (3か月に1回程度の頻度で、くじ引きによる席替えが行われます。) コアタイムは設けておりません。自主性を重んじ、やるべきことを計画的に集中して行うことを奨励しています。(この辺はずっと同じ。)

週に二度、セミナー(研究の進捗報告、論文紹介、タイトルサービス)があります。これに加え、卒研生は英語の教科書の輪読を週に1度行います(3カ月程度)。

最近は、大学院に進学してくれる学生がたくさんいるおかげで研究室の規模がかなり大きくなってきました。 (ちなみに石井は川崎研のOBです。石井がB4の時の学生数は10人程度でしたが、今はなんと20人!) 研究内容の部分に書いたように、研究テーマも多岐に広がってきています。

この規模を生かして研究を更に加速させようと、2019年度からは研究チーム制という新しい試みを開始しました。 研究テーマが近い学生で4~5人程度のチームを作り、各自の研究の進捗状況や進め方について学生間でディスカッションしてもらうことを習慣化してもらっています。 (上記セミナーの「研究の進捗報告」では、チーム毎に進捗状況をとりまとめて発表。) 相互に意見をだしあうことで、自分の研究だけでなく、他人の研究についても理解できる広い視野をもった人材に成長できるかと思います。

週に1回程度、有志で昼休みにテニスをやっています(川崎にコーチするすことが求められます)。本当はもっと回数を増やしたいのですが、 最近は昼休みになかなかコートが取れなくて断念することが多いです。。。 練習後はちょっとましなフレンチやイタリアンにも行くこともありますが、 基本はサイゼリアです。夏以降はDG杯に向けてソフトボールの練習をします。 DG杯は研究室でもっとも大事なスポーツ行事と位置付けています。今年は学生数が多かったので、2チームでエントリーしましたが惨敗でした。。。

飲み会は公式には年4回(花見、院試激励・お疲れ、忘年会、歓送迎会)ですが、これだけは学生は自主開催を多数やっているようです。 9月頃にゼミ旅行に行きます。来年の開催地はまだ決まっていませんが、伊吹山の近くにテニスとバーベキューができる良い施設があり、ここ数年、そこを利用することが多いです。 飲み会・ゼミ旅行・DG杯などのイベントは柳生研と共同で開催しています。

卒論テーマ

上の研究内容と深く関係します。とりあえず、下記のようなテーマを考えています。

  1. ものすごく高速に動作する蓄電池の開発
  2. ものすごく高い圧力でも使える蓄電池の開発
  3. ものすごく良い性能の太陽電池・光触媒電極の開発
  4. ものすごく狭い空間を利用した新物質の合成

卒業研究は1年をかけて行われます。その間、実験結果について何度もグループ内で議論し方向性を皆さんとともに検討しますので、当初のテーマと大きく研究内容が変わってしまう場合もあります。 研究内容で書いたように、新しいテーマの開拓も積極的に進めています。(これらのテーマを進めてくれる意欲的な学生を期待しています。) 今年は幸いにも色々なことに興味をもってくれる学生が多数いて、通常の化学実験だけでなく、機械工作、電子工作を駆使した装置開発なども行っています。

現在、当研究室がメインとしている学会は、炭素材料学会(冬開催)、電気化学会(年2回、春、秋開催)、フラーレン・ナノチューブ総合シンポジウム(年2回、春、秋開催)、中化連(秋開催)です。

大学院生には、最低限、毎年1回はどこかの学会で研究発表してもらうことにしています。 今年は、炭素材料学会で発表したM1の学生がポスター賞を受賞しました。 なお、2020年3月の電気化学会は名工大で開催されることになりました。我々の研究室からは、M1の学生2名が発表します。

国際会議は、Carbon(毎年)を中心に参加していますが、最近はナノカーボンや電気化学関係の国際会議が頻繁に開かれるので、そちらにも適当に参加しています。

数年前からドイツのエアランゲン大学(FAU)と、光触媒の共同研究を進めています。 大学基金の援助を受けて、これまでに5名の大学院生が留学しました。(2017年度に2名、2018年度に3名、がそれぞれ3か月ずつ滞在。) やる気のある学生に対しては、国際会議での発表や海外留学などができるよう、可能な範囲でサポートをします。博士後期課程への進学も歓迎です。

約束ごと(本当はたった一つ「他人に迷惑をかけない」)