[このページ]で述べたように、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)は耐久性に優れた材料ですが、化学的な安定性に優れるがゆえにそれ自身の触媒活性はそれほど高くありません。そのため、電極触媒として活用するには、別のナノ材料との複合化が必要となります。
そこで本研究では、遷移金属水酸化物とSWCNTの複合化に取り組みました。Fig. 1に示すようにSWCNT表面に優れた触媒活性を有するナノシートを析出させ、そこを触媒反応サイトとして活用します。また、電極触媒として利用するためには、触媒反応が起こるサイトに電子をうまく供給する道筋も必要になりますが、これにSWCNTを利用しようというアイディアです。
Fig.1 SWCNT表面への高性能ナノ触媒の複合化
SWCNTは、その名前が示すようにナノサイズのチューブ状の物質です。このチューブ内には様々な分子を挿入することができます(Fig. 2)。
Fig.2 SWCNTのチューブ内には様々な分子を導入できる
Fig.3 SWCNT内に電子吸引性分子(TCNQ)を導入し、チューブ外表面を正に帯電させる
SWCNT内に電子を引き付ける力が高い分子を挿入すると、SWCNTの外表面を正に帯電させることができます(Fig. 3)。この性質を利用して、Fig. 1のナノシート触媒の電極触媒活性を大幅に向上させることができることが明らかになりました(Fig. 4)。
Fig.4 SWCNT複合電極のスイープボルタモグラム。電流の立ち上がる電位が低いほど、水電解酸素発生が起こりやすいことを示す。
(謝辞:本研究の一部は公益財団法人JKAの助成を受けて実施しました。)