ナノスペースカーボンの科学と工学、極限環境の電気化学

名古屋工業大学 川崎・石井研究室

「最近の研究から」Vol. 68

監修した本が出版されました

更新が滞っておりましたが、研究室活動は例年と変わりなく行われてきました。秋~冬には高圧討論会、中化連(名工大で開催されました)、炭素材料学会で研究室学生が発表を行いました。特筆すべきことはM2の網野さんが炭素材料学会で学生優秀口頭発表賞を受賞したことです。彼女は昨年の同学会でポスター賞を受賞しており2年連続での受賞という快挙です。

3月になって、昨年の春ごろに出版社からお声がけいただいて進めていたカーボンナノチューブに関する本が届きました。

内容はカーボンナノチューブに関する最近のトピックスをまとめたものになりますが、第1章の合成については名城大・丸山先生に、第2章の分離・分散のところは京都工繊大・野々口先生にそれぞれのレビュー的なものも書いていただいています。下記は本書の目次になります。

第1章 カーボンナノチューブの作製/成長
1. 種々のカーボンナノチューブ合成法の特徴と課題
2. 非金属ナノ固体成長核からのカーボンナノチューブ合成
3. カーボンナノチューブ構造体の作製とその応用
4. 気体放電を利用したカーボンナノチューブフィラメントの作製
5. プラスチックからカーボンナノチューブへの変換技術

第2章 分離・分散と複合材料
1. 糖鎖化学を利用したカーボンナノチューブの分散・分離技術
2. カーボンナノチューブの液中解繊と分散液の評価技術
3. 大阪ガスケミカルのカーボンナノチューブ造粒品およびコンパウンド
4. 複合材料における界面へのCNT適用

第3章 機能と応用
1. 錯体化学の概念を駆使したカーボンナノチューブのp型ドーピング
2. プラスチックフィルムへのナノチューブ配線技術
3. カーボンナノチューブを活用した赤外線センサ
4. カーボンナノチューブの化学修飾によるカラーセンター形成と新たな近赤外発光特性の発現
5. カーボンナノチューブ(CNT)の分散技術開発とフレキシブル電極への応用
6. プルシアンブルー類似体ナノ粒子と単層カーボンナノチューブを用いた新しい正極構造の構築
7. 単層カーボンナノチューブのヨウ素内包を利用した二次電池,太陽光水素生成
8. 分子接合によるカーボンナノチューブ紡績糸の低熱伝導率化と布状熱電変換素子
9. 半導体カーボンナノチューブを用いた塗布型半導体デバイスの開発
10. カーボンナノチューブとその細孔内に制約された水溶液との界面に形成される強酸性吸着層
11. 身近な材料とカーボンナノチューブを組み合わせた複合材料とその応用展開
12. 有機修飾単層カーボンナノチューブ界面膜に対するバイオ分子の吸着固定化とその活性維持
13. TUBALL™単層カーボンナノチューブの特徴と活用

ナノチューブはさまざまな応用が期待されてきましたが、どうやらリチウムイオン電池にはもはや欠くことのできない材料のひとつになっているようです。こうした応用面は第3章において企業の方にも多数ご執筆いただいており、“ナノチューブの実用性”の最新の実態を理解することができます。ぜひ手に取っていただけたら幸いです。

(2025. Mar. S.K.)