ナノチューブの本の執筆と電池の本の監修
科学情報出版の「設計技術シリーズ」でカーボンナノチューブの本を書きませんかと昨年の秋にお誘いを受けました。これまでたくさんのカーボンナノチューブの本が出ていますが、どちらかというと物理寄り、理学寄りの本が多いように思います。お誘いを受けたのは、もう少し工学的な視点でナノチューブの応用を目指す方にヒントになるような化学寄り、工学寄りの本をとのことでした。私の手には余るとは思いましたがせっかくの機会ですのでお引き受けすることにしました。担当の方には半年くらい脱稿まで待ってくださいと伝えました。なんとなく半年あれば、という感覚だったのですが、これが見込み違いも甚だしいことに気がつくのにそんなに時間はかかりませんでした。
とにかく、何も書けない、進まないのです。自分の知識不足、勉強不足を思い知らされました。いったん書くことをあきらめ、学生に戻って論文収集、図書館通い、ノート作成に専念しました。閉架図書にある自分の年齢より古い図書を探しに図書館の地下室にも行きました。時々かかってくる出版社からの電話にたじろぎながら脱稿予定を少し先延ばしにしてもらい、土日を含め使える時間はこの本に費やしました。先日、何とか原稿を書き上げ出版社に送り一息ついています。まだ、出版までには幾山もあるでしょう。出版されましたらぜひお手に取っていただけると嬉しいです。
そんな中、年明けにシーエムシー出版の方からリチウムイオン電池の炭素負極の総説集の監修をしませんかとのご依頼をいただきました。こちらも私の身の丈を考えればお断りする一手なのですが炭素材料学に少しでも貢献できるのであればと考えました。素晴らしい執筆陣で炭素負極をさまざまな角度から解説いただきます。この総説集の特徴の一つはこれまで取り上げられることが少なかった炭素表面での副反応にスポットをあてていることです。”the most important, but the least understood”な副反応にこそ、次世代二次電池のカギがあると信じています。こちらもぜひお楽しみに。
(2019, May, SK)