ナノスペースカーボンの科学と工学、極限環境の電気化学

名古屋工業大学 川崎・石井研究室

「最近の研究から」Vol. 30

宇宙エレベーター

季節の休暇では、2~3日の有給休暇をプラスして普段できない(できるはずだが)読書や他の人にはどうでもよいイベントを考えてともかくやってみる、ということを少なくとも計画はする。今回の冬休みは研究室の棚づくりのための木材と図書を10冊ほど買い込みました。ところが、冬休み前日にひいた風邪をこじらせてお正月も寝たきりになり、棚のほうは図面すらひけず、本は少し回復したお正月後半にやっと数冊流し読みできただけに終わりました。

学生向けのナノカーボンの話では必ずイントロに入れる「宇宙(軌道)エレベータ」の話が本になっていました。その名も「宇宙エレベータ」(石川憲二著、オーム社)で具体的な数字が記されていて面白く読むことができました。ただし、私は一次文献まであたっておりませんので、これらの数字がどれほどの精度かということについて感覚をもっておりません。宇宙エレベータ1基の建設費用が1兆円と聞くとかなり安いなと思ってしまいます。  

例によって、宇宙エレベータの軸となる材料がこれまでなかったが、カーボンナノチューブが発見されて云々、という話になるのですが、これまでの材料ではどのくらいだめで、カーボンナノチューブならなぜ大丈夫かが、この本には具体的な数値が並べて説明がある。この数値は「破断長」(自重で切れてしまう長さ)というらしいが、これが鋼材で50 kmなのだが、宇宙エレベータには4960 km以上必要らしい。カーボンナノチューブは理論上はこの破断長が1万km以上あるらしい。

しかし、著者が書いているように実際のカーボンナノチューブはせいぜいセンチメートルの長さのものしか合成できず、これを仮につむいで糸にしても上のような強度がでるとは思えない。このあたりが私にはまったくわからなくなるのであるが、だけどきっと合成は可能になるからということで、建設費用も見積もれるのでしょうか。