「構造無機化学I, II, III」(共立全書)
学生時代に「この物質の構造がわからない」、と助手の先生に尋ねたときに教えられた本。以来なにか構造でわからなくなるとまずこの本を頼りにしました。わたしにとっては魔法のような存在でした。大学を転々としましたが、幸いどこの大学の図書館にもこの本はありました。ただこれだけ便利な本だとどうしても手元に置いておきたくなります。助手になってからこの本を求めてあちこちの古本屋を訪ねました。東京へ出張のたびに神保町めぐりをし、明倫館チェックを欠かさないようにしました。ところがいつ、どこを訪ねてもこの本にめぐり合うことはできず残念な思いを繰り返しました(ただし、何かしら面白い本がみつかりましたから落胆するほどのこともありませんでした)。
先日、まったく別のジャンルの本についていつごろ出版されたのかを調べようとタイトルを入力して検索すると、アマゾンへのリンクがあり、驚いたことに(こんなことに驚いたことに、いまとなっては驚き、呆れますが)そこへ飛ぶと新刊価格と並んでユーズド価格が表示されていました。新刊本だけ扱っているところだという先入観に強く支配されていたので、古書の取り扱いがあることに驚いてしまったのです。
古書の取り扱いがあるとわかって、ちょっと感心する間があって、すぐに「構造無機化学」が浮かびました。なぜか恐る恐るタイトルを入力して検索する、検索の最終クリックはちょっとためらいながら。あっけなく、本当にあっけなく見つかりました。放心とまでは言いすぎですが、かなり近い感覚でした。「構造無機化学I, II」と「III」は違う書店で、かつ版も違いましたが、そんなことはどうでもよい、すぐに発注しました。