研究室ガイド(2017年度版)
■はじめに
このページは来年度(2018年4月~)、当研究室への分属を考えている名工大生の参考のために書きました。
■研究内容
当研究室ではフラーレン、カーボンナノチューブ、グラフェンに代表されるナノカーボンを機能化し、リチウムイオン二次電池負極、 電気化学キャパシタ電極などエネルギーデバイスへの応用を主に目指しています。
「主に」と書いたのは、研究の幅が徐々に広がってきたためです。 最近は、ガスクロマトグラフやソーラーシミュレータ(太陽光を再現する高性能ライト)を導入し、 光エネルギーを使った水素発生や二酸化炭素の再資源化のための触媒電極開発など、新たなテーマへの挑戦も始めています。
また、我々の研究室が蓄積してきたナノカーボン電極の研究を応用し、電気化学のフロンティア領域を開拓も進めています。 具体的には、深海や宇宙などの極限環境における電気化学反応の解明と、その応用を目指した研究を行っています。 皆さんが授業で習ったように、圧力と温度は熱力学の最重要パラメータです。しかし、電気化学分野では日常的な実用デバイスへの直接応用を 目指した研究が先行しており、特殊な温度・圧力環境での反応・物性については、ほとんど調べられてきませんでした。このような未開領域を開拓することで、 新たなる学問領域を創製ができるのでは?と密かに期待しております。 今年の春には4,000気圧(マリアナ海溝最深部の水圧の約4倍!)もの超高圧力を発生させられる実験装置を導入しました。世界に1台しかないオーダーメイドの装置です。 このような装置を駆使した実験で得られるデータは、深海・惑星探査機のための畜電池開発、資源調査等への応用に役立てられると考えています。 このような基礎研究は、企業に就職してからではなかなかできません。大学の研究室だからこそ取り組めるテーマだと考えています。
こうした研究は必ずしもすべて狙い通りというわけにはもちろんいかないのですが、少しずつですが目指している方向に研究が進展しつつあると感じています。 いろいろなところからお声をかけていただき、さまざまな分野の先生方、企業と共同研究をさせていただいています。ドイツ、インドなどの海外機関と共同研究しています。 研究室の学生たちの弛まぬ努力のおかげで、アメリカ化学会(ACS)やイギリス化学会(RSC)などの有力な学術誌に掲載される論文も着実に増えてきています。
詳しい話は見学に来てくれた人にもれなくお聞かせします。皆さんの力で私たちの研究室の研究をぜひ加速させてください。
■現在の卒論テーマ
- リチウムイオン電池の高圧力下での挙動の解明
- 高速充放電可能な水系蓄電池電極の開発
- 電気化学めっき法を用いた新規金属‐ナノカーボン複合体の合成
- 内包カーボンナノチューブの電子状態の解明
- 二酸化炭素を原料とした、電気化学的なカーボンナノチューブ合成法の開発
■研究室の仲間
2018年度はおそらく下記のようになります。教授1名、助教1名、D3 1名、M2 6名、M1 5名、+卒研生(皆様)です。中国からの留学生が1人います。
■研究室での生活
川崎グループは大きくは応用無機化学分野に属します。学生居室(19-420)は柳生グループの学生とシェアしています。 最近は人数が増えてきて学生居室1部屋だけでは収まらなくなってきたので、一部の学生は石井の居室(19-402)で暮らしています。 (3か月に1回程度の頻度で、くじ引きによる席替えが行われます。) コアタイムは設けておりません。自主性を重んじ、やるべきことを計画的に集中して行うことを奨励しています。(この辺はずっと同じ。)
週に二度、セミナー(研究の進捗報告、論文紹介、タイトルサービス)があります。2018年度からは、新たな試みとして「炭素材料、電気化学、研究装置に関する ミニ勉強会(10分程度)」を輪番で行おうと予定しています。あと、卒研生は英語の教科書の輪読を週に1度行います。
上記の定例セミナーとは別に、不定期にグループ内で研究状況について報告してもらいます(報告といっても、かしこまって何かやるというわけではなく、 どんな風に研究を進めていったらよいかということについてグループのみんなの意見を出し合うことをやっています)。
週に2回、有志で昼休みにテニスをやっています(川崎にコーチするすことが求められます)。練習後はちょっとましなフレンチやイタリアンにも行くこともありますが、 基本はサイゼリアです。夏以降はDG杯に向けてソフトボールの練習をします。DG杯は研究室でもっとも大事なスポーツ行事と位置付けていますが、今年も惨敗でした。。。 (毎年、1回戦敗退が続いています。来年こそは!)
飲み会は公式には年4回(花見、院試激励・お疲れ、忘年会、歓送迎会)ですが、これだけは学生は自主開催を多数やっているようです。 9月頃にゼミ旅行に行きます。今年は伊勢・志摩にいきました。飲み会とゼミ旅行は柳生研と共同で開催しています。
■卒論テーマ
上の研究内容と深く関係します。また、卒業研究は1年をかけて行われます。その間、実験結果について何度もグループ内で議論し方向性を皆さんとともに検討しますので、 当初のテーマと大きく研究内容が変わってしまう場合もあります。研究内容で書いたように、新しいテーマの開拓も積極的に進めています。(これらのテーマを進めてくれる意欲的な学生を期待しています)
とりあえず、下記のようなテーマを考えています。
- ものすごく高い圧力でも使える蓄電池の開発
- ものすごく寒い温度でも使える蓄電池の開発
- ものすごく高速に動作する蓄電池の開発
- ものすごく高い温度の電解反応を利用したナノカーボンの合成
- ものすごく規則正しいナノ構造もった多孔質薄膜の電気化学合成
現在、当研究グループのメインの学会は炭素材料学会(冬開催)、電気化学会(年2回、春、秋開催)、フラーレン・ナノチューブ総合シンポジウム(年2回、春、秋開催)です。 不定期に、日本MRS、セラミックス協会年会、化学会年会に参加します。
なお、2018年度の炭素材料学会は名工大で開催されます。 せっかくの機会ですので、大学院生を中心に積極的に発表してもらおうと考えています。
国際会議は、Carbon(毎年)を中心に参加していますが、最近はナノカーボン関係の国際会議が頻繁に開かれるので、そちらにも適当に参加しています。 積極的な学生については国際的な場で活躍する機会を提供できるようにできる限りのサポートをいたします。 今年は名大の伊丹先生主催のナノカーボンの国際会議が名古屋で開催されたので、学生7名がポスター発表しました。海外での発表も奨励しています。12月には、台湾で開催された学会で、M2の学生が英語の口頭発表をしました。
昨年からドイツのエアランゲン大学(FAU)との交流を進めています。今年は大学基金の援助を受けて、3名の大学院生が留学しました。 (W. Heiss先生の研究室に2名、W. Peukert先生の研究室に1名、が3か月ずつ滞在。)さらに、2018年夏には別の院生(新M1)が1人留学予定です。
■約束ごと(本当はたった一つ「他人に迷惑をかけない」)
- 研究を楽しめること。(これがもっとも大事)
- 研究室の雰囲気を悪くしないこと。
- 研究室をきれいにすること(整理整頓)。
- セミナーの時間を守ること。