ナノスペースカーボンの科学と工学、極限環境の電気化学

名古屋工業大学 川崎・石井研究室

「最近の研究から」Vol. 51

ISPlasma2018:李君・松下君が発表、Wang先生との交流

3月4日~8日に名城大学で開催された国際会議「ISPlasma2018」で、M1の松下君とD1の李君がポスター発表しました。

松下君はリチウムイオン電池の高圧下における動作挙動について発表しました。研究室ガイドに書いたように、最近、我々の研究室では温度‐圧力について、電気化学のフロンティア開拓(超高圧、超高温、極低温環境における電気化学の学理究明とその応用)をすすめています。昨年の春には、2017年4月から超高圧力下で電気化学実験をおこなうための独自の装置を立ち上げました。今回の発表は、リチウムイオン電池におよぼす圧力の効果について1年をかけて検討した結果の成果報告です。1000気圧という高圧力下で、リチウムイオン電池の黒鉛負極がどのように動作するのか議論しました。

李君は、水系リチウムイオン電池について発表しました。電池の研究というと「容量・電圧などの性能を向上させる」といった方向に目がいきがちですが、価格、安全性、耐久性など、現在の蓄電池には解決すべき課題が多々あります。今回、李君が提案した新型電池は下図のように、正極にヨウ素内包カーボンナノチューブ、負極にキノン分子内包カーボンナノチューブ、電解液にヨウ化ナトリウム水溶液をつかった構成になっています。

この電池のアピールポイントは「水系」の電解液を使っているところにあります。リチウムイオン電池で問題となる発火の危険性が全くありません。また、高速動作が可能なこともアピールポイントです。カーボンナノチューブのチューブ内をうまく使うことで、レアメタルフリーな電池が実現可能であることを実証しました。

ISPlasmaには、ISPlasma Awardとよばれるポスター賞があります。(2013年には当研究室OGのAyarさんが受賞しています。->Vol. 32を参照)この賞の審査プロセスは2段階あります。今回、李君は1段階目の審査をパスしたのですが、2段階目で惜しくも落選。。。今回の結果は残念でしたが、次の機会にリベンジしよう!

3月6日の夜には、招待講演者として来日した台湾科技大のWang, Chen-Hao(王丞浩)教授と会食しました。(Wang先生、李君、川崎、石井の4人で日本料理を食べにいきました。)写真の左から2番目がWang先生です。

Wang先生は、我々の研究室と同じく電気化学に関心があり、最近は燃料電池の電極触媒の開発を進めているらしいです。最近の研究についてだけでなく、日本、台湾、中国の食文化の類似性・違いなど、とても有意義で楽しい会話をすることができました。Wang先生は、学会発表、共同研究、実験等で、頻繁に来日しているそうです。またお会いできる日を楽しみにしています。

(April 2018. Y. I.)