ナノスペースカーボンの科学と工学、極限環境の電気化学

名古屋工業大学 川崎・石井研究室

「最近の研究から」Vol. 46

ロアルド・ホフマン先生のサインとフラーレンポリマー

本学は今年で創設から111周年とのことで、11月1日にいくつかの記念行事を行いました。その行事の一つとしてノーベル化学賞を1981年に受賞されたロアルド・ホフマン教授の記念講演と先生が書かれた演劇「これはあなたのもの」の上演がありました。これらの行事のあとで名工大の関係者十数名がホフマン先生を囲んで懇親会を開催しました。そのときに、思い立ってホフマン先生に先生が書かれた本(原書でないところが残念ではありますが)をお見せしたところ、左のようなサイン(軌道の絵も)をいただきました。私の名誉のために説明を加えると、私がサインをおねだりしたのではなく、(おそらく私の思いを察した)先生が自らペンを取り出してくださいました。

ホフマン先生はフロンティア軌道論の福井謙一先生とともにノーベル賞を受賞されました。化学の学生にはおそらくウッドワード・ホフマン則といえばピンとくるでしょう。この法則の優れているところはシュレディンガー方程式を解かなくとも反応が起こるかどうかを直感的に予測できることである。例えば、エチレン2分子間の2つの2重結合から4員環ができる(「2+2環化付加反応」)かどうかを予測できる。答えは、「基底状態からは反応は難しく、1電子励起状態からは容易に反応できそう」である。すなわち熱的な反応では「2+2環化付加反応」は無理で、光化学反応が必要ということになります。私はフラーレンC60を高圧下で重合したフラーレンポリマーを扱っていました。高圧をかけて加熱して重合させるのですが、ある学会で、光化学反応でなくても重合するの?と聞かれたことがありました。超高圧というのは無理を通す面白い世界であるとあらためて感じます。(S.K.)

(Nov. 2016.)