ナノスペースカーボンの科学と工学、極限環境の電気化学

名古屋工業大学 川崎・石井研究室

「最近の研究から」Vol. 43

中化連5件発表

2015年11月7日、8日に三重大学で開催された第46回中部化学関係学協会支部連合秋季大会(通称、中化連)に研究室から5件の発表を行いました。

M1の阪本君は「単層カーボンナノチューブに内包させたリンの低温下でのイオン吸蔵能」というタイトルでナノチューブの中に導入したリンがプロピレンカーボネート(PC)電解液を使用することで低温(0℃)でも可逆的にNaイオンの吸蔵・放出が可能であることを報告しました。Liイオン電池の負極である黒鉛がNaとPCを嫌うのですが、ナノチューブ内包系を使うことで2つとも克服できることを示しました。

同じくM1の細江君は「単層カーボンナノチューブに内包させたキノン分子による多価イオンの補捉」でナノチューブ内のキノン分子がLiイオン電池やひょっとすると多価イオン電池の電極としてうまく機能するのではないかということを報告しました。キノン分子は電解液への溶出をいかに防ぐかという点がポイントになりますが、ナノチューブに内包させることでこれをクリアしました。フェナントレンキノンはMgやCaも上手に捕捉できそうで面白いと思っています。

M2の竹内君と早川君はそれぞれ、「単層カーボンナノチューブキャパシタ電極のイオン吸脱着挙動」、「NMRによるグラフェン様分子のナトリウムイオン貯蔵サイトの評価」について発表しました。竹内君は初日の一番最初、早川君は最終日の最後の発表でした(これではサボれない…)。

ここまでの4人は「電気化学」のセッションでの発表ですが、もう一人のM1・吉田君は「無機化学」のセッションで発表を行いました。タイトルは「単層カーボンナノチューブに内包させた分子の温度・圧力による構造変化」と大きいのですが、時間の都合もあり、大半はヨウ素を内包したナノチューブのラマンに関する実験結果を説明しました。このテーマは12月に川崎が炭素材料学会で発表する内容でもありますが、実験結果の解釈に難儀しています。(S.K.)

(Dec. 2015.)