ナノスペースカーボンの科学と工学、極限環境の電気化学

名古屋工業大学 川崎・石井研究室

「最近の研究から」Vol. 35

メソポーラスシリカの回折強度

メソポーラスシリカはメソ孔が規則正しく配列した多孔質シリカです。本体は非晶質なのですがX線回折実験を行うと、直径のそろったメソ孔が規則正しく配列しているために低角側に回折線が観測されます。いま、配列しているため、と言い切りましたが、よく考えると散乱性能がない空孔が規則配列していても本当に回折が生じるのかなと思うかもしれません。しかし、実際にメソポーラスシリカを合成して実験すると、明瞭に観測されるので、最初抱いた疑問はどこかに忘れてしまいます。回折線の位置から、メソ孔の中心間距離がわかり、窒素吸着で求めたメソ孔径を差し引くとシリカの壁の厚みが計算できます。そんな風に、みんながやっているように解析するのは簡単です。

しかし、最初にいだいた、なぜ回折するのかという疑問と、回折強度にどういう情報が含まれているのか、をもう少し考えてみよう。この課題に博士課程の石井君が挑んでくれて見事に解決してくれました。彼は、きちんと回折強度が計算でき、回折図形をシミュレートできることを示しました。このシミュレーションにより回折図形からメソ孔中心間距離だけでなく、メソ孔径も評価できることを示しました。ガス吸着実験をしなくても、回折実験だけでメソ孔径を評価できるのでいろいろな条件下でのその場観察実験が可能になります。石井君はこの研究成果を2012年12月22日に開催された第12回 日本表面科学会中部支部 学術講演会で発表し、講演奨励賞を受賞しました。