ナノスペースカーボンの科学と工学、極限環境の電気化学

名古屋工業大学 川崎・石井研究室

「最近の研究から」Vol. 32

若鯱賞と ISPlasma Award

D2 の石井君が2月に若鯱賞を、同じく D2 のAyarさんが3月にISPlasma Awardを受賞しました。私の力不足で賞とは縁のない研究室でしたが、今年は良いことが続きました。とくに Ayar さんの研究はとても面白い結果だと思っていたのですが、なかなか論文を受理してもらえず昨年は非常に悔しい思いをしていました。単層のナノチューブへのイオン吸着をサイクリックボルタモグラムで見ると、ものすごくへんてこな形になるという内容の論文です。もちろん、これまでにたくさんの同様な研究があって誰もそんなへんてこな形のことを言っておりませんから簡単には認めてもらえません。これまでは、電気伝導性の低い炭素材料に一般にみられるバタフライ型との報告が多数です。

電気化学測定は比較的一度の測定に多くの試料量を必要とすることから、比較的製造コストの低いCVDで合成されたチューブが測定対象になっていることが多いように思います。今回、非常に高結晶性のナノチューブでチューブ径のそろった試料で実験を行ったところ図のようなへんてこな形のCVが得られました。これを鉄アレイの形になぞらえてダンベル型と私たちは名づけました。  

どうしてダンベル型になるのかということについては私たちはナノチューブの特異な電子構造と関係していると考えています。詳しくは、やっとJ Phys. Chem. C にアクセプトされた論文を読んでください。Ayar さんはこの研究を進め、今回のAwardの受賞に至りました。