ナノスペースカーボンの科学と工学、極限環境の電気化学

名古屋工業大学 川崎・石井研究室

「最近の研究から」Vol. 24

光るメソポーラスカーボン-シリカ複合体

規則正しい細孔構造を有するメソポーラスシリカは良く知られた存在でさまざまな分野の研究者が扱い、応用研究も盛んに行われている。このメソポーラスシリカのカーボン版が面白い、と宣伝している。シリカと異なり導電性があるので、表面に機能性官能基を導入して電気化学的に反応を制御・検出することができるのではないか、などと主張している。残念ながら当方はそのような高等な技術を有していないので、現状はこれの電池電極特性を評価していることに留まっている。

メソポーラスカーボンの合成法に関してはこれまでにいくつかの方法が開発されており、それぞれに特徴ある生成物が得られる。写真に示すようにその細孔構造はきわめて規則的である。写真のようなチャネル細孔以外にもいろいろな規則性細孔を有するカーボンを合成できる。このあたりのことは、先日発売された、雑誌「化学」の拙文をお読みいただければ幸いです、と宣伝。そこにも少しだけ記しましたが、この物質を少し処理すると、近紫外励起で明るく白色発光することに最近気がつきました。

カーボンの骨格構造の評価にラマンスペクトルが多用されることはすでに何度か書いてきたとおりです。このメソポーラスシリカ-カーボン複合体でもいつものごとくラマンをとりなさい、と学生に指示します。「うまくとれません」と学生が何度言ってきても特段気にせず単純な実験トラブルであろうと考えていました。あるとき、ふと半年くらい前にフランスの会議で聴いたJFCCの石川先生のシリコン-炭素複合体の発光の話を思い出し、ひょっとしたら合成した試料が蛍光を出しているのかもしれないと考え、調べてみるとどうやら直感が当たったようです。

その後は石川先生(と学生の松村さん)のお世話になり、共同研究を進め、先日特許出願するに至りました。しかし、蛍光体としての最適化やそれを行うための蛍光メカニズムの解明などやらなければならないことが山積みです。私たちの研究室でこのような光り物を扱うことになるとは思っていませんでしたので全てが手探りの状態です。

この発光物質は希土類元素のような金属元素を一切含まない軽元素だけから成る系でありながら、広範囲の波長領域にスペクトルが広がっており5500~6000 K程度の黒体輻射スペクトルにかなり近く、白色性にすぐれている。また、生体親和性にもすぐれることから、照明材料だけでなく化粧品(UVカット)などへの応用も期待できる、と期待している。