ナノスペースカーボンの科学と工学、極限環境の電気化学

名古屋工業大学 川崎・石井研究室

「最近の研究から」Vol. 15

水溶性ナノチューブのその後

最近の研究から vol.9 でお伝えした水溶性ナノチューブのその後です。水溶性ナノチューブらしきものができたが、本当にナノチューブの構造を保っているのか、率直なところ、私もかなり不安でした。溶液は写真でご覧いただけるように完璧に透明です。ナノチューブを界面活性剤で分散させた溶液を何度も見ていますが、いかにもナノチューブを無理やり分散させているのがすぐわかります。それに対して、写真のものは完璧に透明です。

この溶液をTEMのマイクログリッドでうけて、乾燥させたものをTEM観察したものがこのTEM写真です。試料台にグリッドをセットして真空排気を待って、フィラメント電流を上げる。低倍で試料がのっているのを確認したら、倍率を上げる。この間数十分でしょうか。ナノチューブがなかったらどうしよう、かなりドキドキしたのを覚えています。倍率を上げて、一面にナノチューブが見えたときは、安堵と喜びが入り混じったなんとも表現しがたい感覚でした。

ラマンでもナノチューブ独特のスペクトルであることを確認し、初期の疑いは払拭されましたが、今度はどんな風に化学修飾されているのか、どんなものにどのくらい溶解するのか調べなければいけません。とりあえず、研究室にあるいろんなものを試してみましたが、水以外はほとんど溶けないようです。水酸基の密度は現状では残念ながら、はっきりしません(XPSをとったのですが)。上の写真は一番上のナノチューブの溶液にNaClを加えたものです。ピンボケになっていますが、ナノチューブが凝集しているのがわかると思います。電荷をシールドしたため再凝集したと理解されます。