ナノスペースカーボンの科学と工学、極限環境の電気化学

名古屋工業大学 川崎・石井研究室

「最近の研究から」Vol. 14

世界で一番安いカーボンナノチューブ製造装置

カーボンナノチューブの合成方法は大きくわけて3通りある。レーザー蒸発法、アーク放電法、CVD合成法である。いずれも大掛かりな装置を必要とする。当然装置も高くなる。なかなか簡単に「ナノチューブでも合成してやろうか」、ということにならない。それを数千円で済ませようというのが写真の装置である。かっこよく書くとメタノール蒸気の熱分解CVD装置ということになります。厳密には、電源としてスライダックを利用しているのでこれに1万円くらい必要です。でも、これでナノチューブが合成できました。

このメタノール蒸気の熱分解CVD装置は実は気相ダイヤモンド合成装置としてあちこちに紹介されているものを少し手を入れたものです。ダイヤモンド合成には基板にSi板あるいはMo板を使うことが多いようです。今回はこの基板に少しだけ仕掛けをしました。といっても簡単なもので、Si基板を硫酸鉄(あるいは硝酸鉄)の溶液に少しつけて乾燥させただけです。これらが触媒となってナノチューブが生成しました。(運悪くTEMのACD(Anti Contamination Device)の調子が悪く、写真がぼけていますが、間違いなくチューブができていました。)

最後に装置の詳細を載せておきます。最初に空気が入らないように(4)のガラス管にいっぱいのメタノールを入れます。つぎにタングステンフィラメントを赤熱させるくらいの電流を流してやるとメタノール蒸気が上部にたまり、余分なメタノールはガラス管を通ってとなりのサンプル管に移動します。基板が液から顔を出したところで、フィラメントを白熱させメタノール蒸気を熱分解します。単層ナノチューブをなんとか作成できないかな、というのが現在の課題です。